自宅にいながらにして、新しい趣味を見つけたり、仲間と出会ったり、社会とつながる「オンラインサロン」は、シニア世代の生活に新たな可能性をもたらしています。かつては特別なものと思われがちだったオンライン交流ですが、近年その状況は大きく変化しています。
目 次
オンラインサロン:シニア世代の新たな可能性
2024年1月時点で、60代の9割以上、70代の8割以上がスマートフォンを所有しており、80代前半でも6割以上が利用しています。これは、シニア世代の間でデジタルツールの利用が急速に進み、オンライン交流が身近な選択肢となっていることを示しています。
「オンラインでの交流は難しそう」「インターネット詐欺が心配」といった不安を感じる方もいるかもしれませんが、本記事では、初めての方でも安心してオンラインサロンに参加できるよう、分かりやすく丁寧にご案内します。デジタルツールが、シニア世代のセカンドライフをより豊かにするきっかけとなることを願っています。
なぜ今、オンラインサロンが注目されているの?
〜心と体の健康を育むデジタル交流のメリット〜
オンラインサロンがシニア世代に注目されるのは、心身の健康維持や生活の質向上に貢献するからです。
心の健康と社会参加の促進
オンラインコミュニティは、自宅にいながら手軽に他者とコミュニケーションをとる機会を提供し、孤独感を軽減し、新たな生きがいを見つける大きな助けとなります。SNSを積極的に活用する高齢者は、孤独感や抑うつ症状が軽減される傾向があるという研究結果も報告されています。気軽に話せる相手がいることは、精神的な安定を保つ上で非常に効果的です。オンライン交流は日々の生活にハリを与え、自己肯定感を高めることで、高齢者の心の健康における「レジリエンス(回復力)」を高める重要な手段となり得ます。
趣味や学びの拡大
オンラインサロンには、趣味の共有、語学や楽器のレッスン、資格取得を目指す講座まで、非常に多様な種類が存在します。自宅から手軽に新しい知識やスキルを習得できるため、新たな生きがいや趣味が見つかる可能性が広がります。オンライン読書会やオンライン体操教室など、一人では継続が難しい活動も、オンラインの仲間と一緒なら楽しく続けられるでしょう。
緊急時の情報源としての活用
スマートフォンは、電話だけでなく、LINEやショートメールなど複数の連絡ツールを備えています。特に災害時など緊急事態においては、SNSは迅速な情報収集に非常に有効なツールとなります。タイムリーな緊急速報を受け取れるため、いざというときの迅速な対応にもつながります。オンラインサロンへの参加を通じてデジタルツールに慣れることは、平時の生活の質を高めるだけでなく、緊急時の安全確保というより根源的なニーズに応えることになります。
身体的負担の軽減と利便性
オンラインサロンは自宅から参加できるため、移動が困難な高齢者にとって大きな利点となります。交通手段の心配や天候に左右されることなく、好きな場所から気軽に参加できるため、外出が億劫になりがちな方でも、社会とのつながりを維持しやすくなります。
“Zoomサロン”に参加してみよう!
〜初めてでも安心、簡単ステップガイド〜
オンラインサロンの多くで利用されているZoomは、手軽にビデオ通話を楽しめる便利なツールです。
Zoomの基本と魅力
Zoomは、顔を見て話せるビデオ通話ツールとして、オンラインサロンで広く利用されています。主催者から共有されたURLをクリックするだけで、簡単に会議に参加できる手軽さが大きな魅力です。安定した通信強度と綺麗な画質が特徴で、画面共有された資料の文字や画像も問題なく判別できるため、まるでその場にいるかのような臨場感で交流を楽しめます。
参加方法:たったこれだけ!
Zoomミーティングへの参加は非常に簡単です。ほとんどの場合、主催者から送られてくるURLをスマートフォンやパソコンでクリックするだけで、ミーティングに参加できます。初めてZoomを利用する場合、URLをクリックするとアプリのダウンロードが促されることがあります。その際は、画面の指示に従ってインストールを進めましょう。名前の入力を求められる場合がありますが、ニックネームなど、表示したい名前を入力してください。
ミーティング参加前や参加中に、マイクやカメラのオン・オフを切り替えることができます。最初は「見るだけ参加」で、マイクやカメラをオフにしておくのも良いでしょう。画面下部に表示されるアイコンで簡単に操作が可能です。
安心・安全に使うためのポイント
オンラインでの交流を安心して楽しむためには、セキュリティ対策も重要です。Zoomミーティングには、パスコード設定や待機室機能といったセキュリティ機能があります。これらの機能が有効になっているミーティングは、不特定多数の侵入を防ぎ、安心して参加できる環境が整っています。
オンライン詐欺は巧妙化しており、不審なメールやSNSのリンクを不用意にクリックしないよう注意が必要です。もし怪しいと感じたら、すぐに家族や信頼できる人に相談することが大切です。
LINEミーティングも活用しよう!
〜身近なツールで広がるコミュニケーション〜
LINEミーティングは、すでに多くのシニア世代が日常的に利用しているLINEアプリを使って、
手軽にビデオ通話ができる機能です。
LINEミーティングの特長
LINEミーティングは、普段使い慣れているLINEアプリで手軽にグループビデオ通話ができる便利な機能です。新たにアプリをインストールする必要がなく、既存の「LINEを使う」という習慣の延長線上にあり、新しいアプリを覚える負担が少ないため、デジタル活用への心理的ハードルを大きく下げることが可能です。
また、YouTube動画を参加者全員で一緒に見れる「みんなで見る」機能や、背景設定・顔エフェクト機能も利用でき、より楽しい交流が可能です。
簡単操作でつながる
LINEミーティングの操作は非常にシンプルです。LINEのトークタブを開き、右上の「吹き出し」アイコンをタップし、「ミーティング」を選択するだけで、簡単にミーティングを作成できます。作成したミーティングのURLを友だちに共有すれば、相手もそのURLをタップするだけで簡単に参加できます。
ビデオ通話のプレビュー画面では、参加前にマイクやカメラのオン・オフ、エフェクトの加工ができるため、自分の映り方や音声の状態を事前に確認し、準備を整えてから参加できます。
LINEを安全に使うヒント
LINEを安全に利用するためには、いくつかのセキュリティ設定を確認することが推奨されます。スマートフォン自体のロックに加え、LINEアプリにパスコードロックを設定することで、他人に見られにくく、より強固なセキュリティを確保できます。さらに、LINEのメッセージは「エンドツーエンド暗号化」という技術によって保護されています。
地域とつながるオンラインサロンの探し方
〜自治体やNPOの取り組み事例〜
オンラインサロンは、個人の興味や関心に合わせて多様な形で存在し、
シニア世代の社会参加を強力に後押ししています。
多様なオンラインサロンの紹介
オンラインサロンは、趣味の共有、学び直し、健康づくり、仕事や副業の情報交換、雑談など、非常に多岐にわたるテーマで存在します。例えば、「趣味人倶楽部」のように50代以上限定のSNSや、「おしるこ」のように趣味別チャットや音声通話が可能なアプリもあります。
自治体・地域コミュニティの活用
多くの自治体や地域包括支援センターが、高齢者のデジタル活用支援に力を入れています。公民館や地域の集会所などでは、無料のパソコン教室やスマートフォン体験ツアーが開催されており、実際に機器に触れながら学ぶことができます。加賀市では「シニアスマホアンバサダー」制度を設け、高齢者同士で教え合う仕組みを構築しています。地域包括支援センターなどがZoomを活用したオンライン健康講座や体操グループを運営している事例もあります。
探し方のヒント
オンラインサロンやデジタル活用支援の情報を探す際は、インターネット検索で「シニア+趣味+オンライン」や「〇〇市+オンラインサロン+高齢者」といったキーワードで検索してみましょう。また、地域の広報誌や自治体のウェブサイト、地域包括支援センターの窓口でも、地域に特化した情報やイベント案内が得られることがあります。
デジタル活用を始めるためのQ&A
〜よくある不安を解消して一歩踏み出そう〜
シニア世代がデジタル活用を始めるにあたり、いくつかの共通の不安や疑問を抱えることがあります。
「操作が難しそう…」を解消!
高齢者のデジタル活用の壁として、「使い方がよくわからない」「言葉が難しい」「操作ミスや詐欺被害への恐れ」といった心理的なハードルが挙げられます。しかし、シニア向けに設計されたアプリやウェブサイトは、文字が大きく、行間が広く、テキストと背景のコントラストがはっきりしているなど、見やすい表示が重視されています。ボタンも大きく、立体感のあるデザインで、タップしやすいように配慮されています。
操作補助ツールも活用できます。指先が乾燥して画面が反応しにくい場合は、タッチペンを利用するのも一つの方法です。また、文字入力が苦手な場合は、音声入力機能を活用することで、抵抗感なく文字入力ができます。AIアシスタント(Gemini AIなど)の音声入力機能を使えば、話しかけるだけでメッセージ作成や情報検索が可能です。
家族のサポートも非常に重要です。家族が根気強く教えることが大切であり、専門用語は「ポンッと触る」「名前や口座番号のようなもの」など、身近な言葉に置き換えて説明すると理解しやすくなります。総務省の「デジタル活用支援推進事業」では、地域の公共施設に「デジタル活用支援拠点」を設置し、専門スタッフが幅広いサポートを提供しています。
「詐欺が心配…」を解消!
高齢者を狙った詐欺は巧妙化しており、特に「預貯金詐欺」「架空請求詐欺」「還付金詐欺」などがあります。不審なメールやSNSのリンクは不用意にクリックせず、必ずウェブブラウザから公式サイトにアクセスしてログインするようにしてください。
パスワードは使い回しを避け、推測されにくいものに設定しましょう。スマートフォンには必ずロックを設定し、顔認証や指紋認証などの生体認証を活用すると、セキュリティが高まります。PayPayや楽天ペイなどのスマホ決済アプリでは、利用通知設定や利用可能額の設定が可能です。プリペイド型の電子マネー(WAONなど)は、事前にチャージした金額しか使えないため、使いすぎの心配が少なく、万が一の紛失時にも大きな損失を防げます。
少しでも詐欺の疑いがある場合は、一人で判断せず、すぐに家族や警察(#9110)、消費生活センター(188)に相談しましょう。
「使いこなせるか不安…」を解消!
新しい技術に接することに不安を感じるのは当然のことです。総務省の調査でも、70代の約6割、80代の約7割がスマートフォンを使いこなせていないと感じているというデータがあります。大切なのは「わからなくて当たり前」という気持ちで、焦らず、自分のペースで取り組むことです。
最初から積極的に発言したり、全ての機能を使いこなす必要はありません。多くのオンラインコミュニティでは「見るだけ参加(ロム専)」も歓迎されています。まずは他の人の投稿や会話を見て雰囲気に慣れ、「いいね」ボタンで軽く反応することから始めてみましょう。
「スマートフォンを使って〇〇ができる」という具体的な目的を持つことが、継続の鍵です。天気予報を見る、ニュースを読む、家族にメッセージを送るなど、簡単な操作から毎日触れる習慣をつけることで、自然と操作に慣れ、自信がついてきます。
まとめ
自宅にいながらにして、趣味の仲間と出会い、新しい学びを深め、離れて暮らす家族や友人とつながる「オンラインサロン」は、シニア世代の生活に新たな彩りをもたらします。孤独感を軽減し、生きがいを見つけ、心身の健康を保つ上で、デジタルツールの活用は今や不可欠なものとなりつつあります。
「難しそう」「心配」といった不安は、決して特別なことではありません。しかし、多くのシニア層がデジタル活用を始めており、そのためのサポート体制も充実しています。家族、地域のスマホ教室、自治体の支援拠点など、困った時に頼れる場所がたくさん存在します。
オンラインの世界は、想像以上に広く、多様な可能性に満ちています。今日から“Zoomサロン”に参加して、新しいつながりを見つけ、シニア世代のセカンドライフをさらに豊かにしていきましょう。